在宅ワークの静寂を埋めるためなど、ラジオをつけて在宅ワークをされている方も多いと思います。そんな中、2026年3月23日、非常に珍しい「事案」に遭遇しました。
生放送の番組終了まであと2分半くらいのタイミングで、突然「ブツっ!」と音がして、DJさんの声が消え、無音が。。。
ほとんどのリスナーは「え?ラジオ壊れた?」なんて思いつつ、無音はおよそ20秒くらい。そのあと急に聞き慣れない「ほわほわとしたインスト曲」が流れ始め、そこでリスナーはようやく気づきました。これはラジオの故障ではなく、放送事故なのだと。
実は、この沈黙は、リスナーが思う以上に「重大事態」らしいのです。今回は、めったに遭遇しないラジオ放送事故の裏側と、その意外なルールについて少しだけ紐解いてみようと思います。

📻K-MIX「モーニングラジラ」生放送で起きた約2分半の沈黙
今回の珍しい事案は、K-MIX「モーニングラジラ」の生放送で発生。
K-MIXとは?「モーニングラジラ」とは?実際に何が起きていたのか?その時の状況をまとめました。
K-MIXとは?
K-MIX(ケイミックス)は1983年より放送を開始したJFN系列(※)のラジオ局で、静岡エフエム放送株式会社が運営する静岡県を放送対象地域とするFMラジオ局です。
自社制作の長時間の番組が多く、地域密着のニュース・音楽・生活情報などを発信しています。愛称の由来は、民放FM局として全国11番目に認可されたことにちなみます(コールサイン※に由来)。
K-MIX:🔗K-MIX「MOVE ON WAVE」
<💡JFN系列とは?>
正式名称は、全国FM放送協議会(Japan Federation of News)といい、🔗TOKYO FMをキーステーションとする、全国38の県域FM放送局で構成された日本最大のFMラジオネットワークです。各局の自社制作番組のほか、TOKYO FM制作の番組が流れます。
株式会社エフエム東京:🔗JFNネットワーク
<💡知ってますか?ラジオ局の「コールサイン」>
日本のFM放送局はそれぞれ、「JO●●-FM」という固有のコールサイン(識別信号)を持っています。K-MIXは、民放FM局として全国で11番目に認可をうけたため、コールサインはJOの後にアルファベットで11番目の「K」が付けられ、「JOKU-FM」に。つまりK-MIXの「K」は、各放送局に割り当てられるコールサインに由来するのです。
「モーニングラジラ」はK-MIXの朝の3時間半をにぎわす看板番組
K-MIX「モーニングラジラ」は、K-MIX制作で2013年4月から放送を開始した番組で、土日を除く毎日、月~金曜の7:28~10:52の約3時間半の生放送。
DJの🔗高橋正純さん(愛称:ズミさん)の軽快、且つ自虐的なおしゃべりと、リスナーからのメールの掛け合いが番組を盛り上げ、多くのリスナー・メール職人を抱えるK-MIXの看板番組となっています。
K-MIX:🔗モーニングラジラ

事件は現場で起きていた
2026年3月23日10時49分頃、K-MIX「モーニングラジラ」放送終了までおおよそ2分半。1通でも多くリスナーからのメールを届けようと、DJズミさんのトークは熱を帯び、まさに「機関銃」のようなフルスロットル状態。しかし、順調にズミさんのトークが炸裂していたその瞬間、
「ブツっ!」
という音とともに突如として訪れた無音が約20秒程度。番組を聞いていた誰もが、「え?ラジオ壊れた?」と思った瞬間でしたが、そのあと急に「ほわほわとしたインスト曲」が流れたため、リスナーは事故だと認識。
そして、いつもの番組の締めであるズミさんの「それではみなさん、お仕事、頑張って!」の掛け声もなく、「ほわほわとしたインスト曲」が終了。
その後ろの10:52からの番組「AZUL CLARO Jumping Heart!!」は生放送ではなかったため、通常通り放送されました。
📻沈黙を破った「ほわほわした曲」の正体
約20秒の静寂。実は、それは放送局のマスター(主調整室)にとっては、血の気が引くような緊急事態です。
ここで働いたのが、放送局の守護神とも言える「無音検出器(サイレンスディテクター)」というシステムです。
無音検出器(サイレンスディテクター)とは?
サイレンスディテクター(無音検知器)とは、放送やオーディオ信号の途切れ(無音状態)を確認すると、予備音源へ切り替えたり、アラームの発報をおこなったり、自動録音停止などを自動でおこなう装置やソフトウェアです。
ラジオ局やテレビ局などでは、放送事故を防ぐ必須の機器です。
ほわほわしたインスト曲の正体は「フィラー」
放送における「フィラー」とは、放送事故による中断や、予定番組の変更時に穴埋めとして流される映像や音楽のことを言います。
本来の番組が何らかの理由(機器故障、人為的ミスなど)で放送できなくなった際に、放送を無音にしないための緊急対応策で、今回の場合も、無音検出器(サイレンスディテクター)によって、自動でフィラーに切り替わったものと思われます。
ニコニコ大百科:🔗フィラー
フィラーは「放送局」と「送信所」の両方に備わっている
フィラーには、放送局(演奏所)のフィラーと送信所(親局)の2つのフィラーがあります。
放送局(演奏所)のフィラー:スタジオ内のトラブル時に、ミキサーや自動送出システムから流します
送信所(親局)のフィラー:電波を出す施設(送信所)に備わっていて、放送局から送信所までの「回線(STLといいます)」が、災害や落雷などで断絶してしまった時の最終防衛ライン
📻radikoは、あの約2分半「沈黙」
radikoでは「フィラー」が流れなかった
K-MIXは、ほとんどの番組をラジオアプリ「radiko」で、スマホからも聴けるようになっています。
では、あの日の「radiko」でのデジタル配信での「モーニングラジラ」はどうだったのか?
SNSでは「radikoでは無音だった」というポストが見受けられ、私は気になって「radiko」のタイムフリー機能(過去1週間の放送を遡れる機能)で確認したところ、やはり番組終了まで「無音」の状態でした。
ということは、配信の仕組みを考えると、もっと手前の、放送を送り出す大元の段階で何かが起きていた可能性が見えてきます。
📻原因は「機材トラブル」
放送から一夜明けた翌日の放送で、この件は正式に「機材トラブル」であったことが告知されました。
この「放送局内の機材」に原因があったということは、radiko側のネット配信で、沈黙が続いた理由を読み解く大きな鍵となります。
📻なぜradikoは最後まで沈黙したのか?
本放送(電波)ではフィラー(音楽)が流れたのに、なぜradikoでは無音のまま放送が終了したのでしょう?
そもそも、本放送とradikoへの出力が違うのか、はたまたradikoではフィラーが流せないとか?そこにはどんな可能性があるのでしょうか?
番組トリガーが受け取れなくなった可能性
この項目については、推測の域となりますが、通常、radikoなどの配信システムでは「今、番組を放送中ですよ」という信号(番組トリガー※)を受け取って音を流しています。
機材トラブルなどでこの信号が途切れてしまうと、配信側は「流す番組の音がない」と判断します。その結果、安全策として自動的に「無音状態」を選択した可能性もあります。
<💡番組トリガーとは?>
ラジオ放送とスマホアプリを連動させるための「制御データ」です。オンエア中の楽曲やゲスト情報の表示、Webサイトへの誘導、さらにはリアルタイムの字幕表示など、耳の不自由な方への情報保障にも活用されている、デジタル放送の要(かなめ)となる仕組みです。
AV Watch:🔗スマホにTVやラジオの字幕表示、ヤマハと16の放送局が「SoundUD」活用の新事業
radikoルートには「自動フィラー」が届かない?
先程のご案内の通り、フィラーは、放送局だけではなく送信所にもあったり、地上波の電波放送には、放送事故を防ぐために幾重にもバックアップできる体制があります。
しかし、radikoなどの配信の場合、 基本的には放送局内の「上流」にあるエンコーダー(変換器)が音源をデジタル化して直接配信サーバーへ飛ばします。
局内の送り出し段階でトラブルが起き、エンコーダーに音が届かなくなった場合には、radiko側のルートには、電波放送のような「自動補填」の仕組みが備わっていなかった、あるいは連動していなかった可能性が高いと言えます。
デジタル配信が抱える「脆さ」がここに
電波の放送ではフィラーは流せても、デジタルの無音は埋められなかったという差こそが、アナログ放送が長年培ってきた「最後の砦(送信所バックアップ)」の強さと、高度な信号制御で動くデジタル配信の繊細さ=脆さの表れかもしれません。

📻実は、ラジオの音が止まるのは「一大事」?
法的な重みもある
実は、「モーニングラジラ」の放送終了後、K-MIXの公式Xで、お詫びと原因調査、再発防止の意向が表明されました。
番組自体は、いつも前向きで元気な番組のイメージ。なのにこの固いお詫びに私は「そんなに重い事案なの?」と感じたのですが、実は、ラジオの音が止まってしまうことは、単なるミスでは済まされない「法的な重み」を持っているようです。
「放送法」では、一定の時間以上放送が止まると、総務省への報告義務が発生します。また、発生原因や影響によっては、厳重な調査の対象になる可能性もあるとの話もあります。
総務省:🔗放送法
ラジオが「止まってはいけない」本当の理由
ラジオは、私たちの生活において「命を守る最後の砦」のひとつとなるものです。
災害が発生し、停電でテレビが消え、ネットワークが混雑してスマホが繋がりにくくなった時でも、電池ひとつで情報を届けてくれるのがラジオ。その信頼がラジオには託されています。
今回の機材トラブルでは、「いかなる時も音を絶やさない」という放送局の執念と、デジタル配信が抱える課題を、リスナーが再確認する出来事でもありました。
私たちが何気なく聴いている、自虐的なズミさんの元気なトーク。その裏側には、災害時にも変わらず声を届け続けるための、厳格なルールとプロのプライドが詰まっているのです。
📻電波のラジオをいつでも備えておこう!
今回、無音状態が続いたradikoと、フィラーに切り替わった電波の放送。この件で、まだ走り出しの状態の配信デジタルのラジオと、電波の放送が長年培ってきたアナログの強みの差を実感しました。
デジタル配信のラジオではさらに「バッファ」という、通信が少し不安定になっても音が止まらないよう、あらかじめ数秒〜分単位のデータを先に読み込んで蓄えておく仕組みがあり、それによる放送の遅れもあります。
私たちは、津波などの場合はたった数分で海水が押し寄せ、命にかかわるということを、東日本大震災で深く記憶に刻んでいます。いざという時に情報が少しでも早く正確に得られるよう、ラジオ配信アプリだけでなく、電波のラジオを常に備えておくことをお勧めします。
📻【まとめ】私にとってのラジオ
私が今回の「2分半の空白」を書いてみようと思ったのは、もっとラジオを知りたかったというのと、ラジオが好きだから。
私はこれまで何度も手術や入院を経験しましたが、手術後など、ベッドで天井を見ているだけの動けない体では、テレビだと体をテレビの方へ向けるのが大変で、そんな時、どの方向を向いていても聴けるラジオは私にとって癒しであり、励ましでした。(同じ理由で、病院でラジオを聴いている方は、意外と多いのです。)
病院での暗い日々に笑いをくれ、「明日の放送を楽しみに、またリハビリも頑張ろう」と思わせてくれた、私にとってなくてはならない存在。
中学生の頃からラジオの深夜放送にしがみついてきたリスナーとして、これからもラジオが、誰かの孤独を埋めるその「音」が、一秒たりとも途切れることなく届き続けることを願っています。

<関連記事> ワイドFMへ切り替え対策はお済みですか?そして、在宅ワークでのラジオは孤独も紛らせてくれるという記事、あわせてお読みください。
<参考記事>
・K-MIX:🔗K-MIX「MOVE ON WAVE」
・🔗TOKYO FM
・株式会社エフエム東京:🔗JFNネットワーク
・サンデーフォークプロモーション:🔗高橋正純
・K-MIX:🔗モーニングラジラ
・ニコニコ大百科:🔗フィラー
・AV Watch:🔗スマホにTVやラジオの字幕表示、ヤマハと16の放送局が「SoundUD」活用の新事業
・総務省:🔗放送法

