SNSで、再び話題になっている「逆ヘルプマーク」を知っていますか?
通常のヘルプマークは、赤色であるのに対し、逆ヘルプマークは緑色。「助けます」という意味。これは、静岡や、京都の小学生が発案したもので、素敵な考え方・アイデアですよね。
しかし現在、通常のヘルプマークの意味さえも、あまり浸透していないなどから、「逆ヘルプマーク」は実際には採用されていません。
この記事では、ヘルプマークやその他の障がい者マークの意味について紹介します。また、障がい者である私自身の、ヘルプマークにまつわる実体験も交えてお伝えします。

「ヘルプマーク」と「逆ヘルプマーク」
電車などで、カバンに赤地に白の白十字とハートのマークのタグをつけた人を見たことはありませんか?そのタグが、「ヘルプマーク」と呼ばれ、見た目にはわからない障害を持っている方(内臓障害、人工関節など)や、配慮を必要とする人がつけるマークです。
話題となっている「逆ヘルプマーク」は、緑地に白の白十字とハートのマークのタグで、いつでも頼ってください、援助しますという意思を示すタグで、静岡と京都の小学生が発案しました。

東京新聞:🔗私が手助け「逆ヘルプマーク」 静岡の小学生が発案
京都新聞デジタル:🔗京都市北区の小学6年生が考えた「逆ヘルプマーク」が話題
【実体験】ヘルプマークが必要な理由
ヘルプマークは、先述の通り、外見では分かりにくい障害がある方が、周囲に配慮をお願いするためのものです。ただ、杖や車いすを使っているなど、一見して障がいが分かる人が携行する場合もあります。
私自身、足に不自由があり、外出時は杖や歩行器を使っています。立っているときは伝わりやすいのですが、座ると杖が服と同化して分かりにくくなることもあり、実際、優先席に座っていた際、「若い人が座る場所ではない」と注意されたことがありました。私は「申し訳ありません。私は足が不自由で、、」と杖を示すと、その方はすぐに「申し訳ない」と理解してくださいました。
この経験をきっかけに、ヘルプマークを携行するようになり、それ以降、同じような誤解を受けることはなくなりました。席を譲っていただくことや、優先席に座ることに、今でも少し気後れする気持ちはあります。それでも、不必要な摩擦を避け、自分が安心して外出するためのものと考え、ヘルプマークを身につけています。

ヘルプマークがなかった時代の実体験
ヘルプマークが生まれたのは2012年、東京都が考案し配布を始めたことがきっかけです。
そのヘルプマークが生まれる前、私が混雑した電車に乗っていたときのことです。優先席付近に乗ってきた女性が、「私はペースメーカーを付けています。申し訳ありませんが、携帯電話の電源を切っていただけますか」と、周囲に向けて少し大きな声でお願いしていました。
しかし、一見、元気に見えるその女性。周囲には状況を理解できず戸惑う空気が。
混雑時の優先席付近では、ペースメーカーへの影響を避けるため、携帯電話の電源をオフにすることが求められています。しかし、それを知らなかったり、そこまで気が回らないことも多いですよね。
あの時にヘルプマークがあれば、周囲の理解はきっと違ったのではと思います。ヘルプマークがなかった時代は、障がいのある方にとってこうした声を上げること自体、現代より負担があったに違いないと感じるのです。

逆ヘルプマークが共感を呼んだ理由と、実現が難しい背景
「逆ヘルプマーク」に共感多数
今の日本では、様々な考えを受け止めていこうという考え方が広まり、さらに相手の身になってと考えると、逆に「助けたら迷惑に思う人もいるかも知れない」と思うことも多くなりました。そのため、実際に私もそうですが、困った人を前に、助けたいけれど声をかけにくいという場面も増えたように思います。
先述の通り、私もヘルプマークを付けていますが、外出先で不自由しているときに、実際に声をかけてくださる方は、本当に勇気があるなと、その助けようという思いとその強さに、とてもありがたい気持ちになります。
その「助けたい」という気持ちを気軽に表すことができる「逆ヘルプマーク」に共感する人は多く、SNSで再び話題となっています。
「逆ヘルプマーク」は実用化していない
「逆ヘルプマーク」は2019年に発案され、多くの共感を得ているのに、いまだ実用化されていません。
それは、「色覚障害(※)のある方にとって、色を識別するのが難しい方もいる」、また、「通常のヘルプマークの意味を知らない人が多いので、ややこしくなる」などの意見もあるためです。
※色覚障害(色覚異常)とは、特定の色(特に赤と緑)の区別がつきにくい状態で、日本人男性の約20人に1人が抱えていると言われています。
障がい者に関係するマークの種類と意味を知ろう!
通常のヘルプマークだけでなく、障がい者マークにはさまざまな種類があります。それぞれの意味がなかなか浸透していないことは、身体に不自由があり、支援や配慮を必要としていても、それが周囲に伝わらないことで、不安や生きづらさを感じている人がいます。
これを機会に、実際に使用されている障がい者マークの、種類と意味を知ってみませんか?
一部の画像引用元:内閣府ホームページ
ヘルプマーク

義足や人工関節を使用している方、内部障がいや難病の方、妊娠初期の方など、外見からわかりにくい、または、配慮や援助を必要としていることを周囲に伝えるための、全国共通(JIS規格)のマークです。
カバンなどに付けて携行します。
ヘルプマークを見かけたら、席をゆずる、声をかけるなど、思いやりのある対応をお願いします。
取得できる場所:無償で配布しています。駅や市役所・区役所、保健福祉センターなど。
管轄:🔗東京都福祉保健局障害者施策推進部計画課社会参加推進担当
※ヘルプマークが前面に印刷された、「🔗ヘルプカード」も自治体によっては存在します。中に主治医や配慮が必要な事項などを書いて携行していると、緊急時に役立ちます。
障がい者のための国際シンボルマーク

障がいのある方が利用できる建物や施設であることを示す、世界共通のシンボルマークです。また、車についていた場合は、その車が障害者(主に身体に障害のある人)が利用している、もしくは車いす搭載車両などを示しています。
駐車場などで見かけた際は、障がいのある方が利用しやすいよう、ご理解とご協力をお願いします。
※このマークは、車椅子利用者に限らず、すべての障がいのある方を対象としています。
車に貼るステッカーを入手するには:カー用品店、ホームセンター、🔗公益財団法人日本障害者リハビリテーション協会での購入
管轄:公益財団法人日本障害者リハビリテーション協会
思いやり駐車場・ゆずりあい駐車場などで、この国際シンボルマークを見たら
駐車場の一角の地面に、この国際シンボルマークがある場合は、その場所は身体障害者や手帳を持つ人が運転または同乗している場合に優先的に使える駐車場です。(車いすの方のみということではありません。)
それ以外の人が停めるのは原則として禁止ですが、すでに停められた車は、障がいのある方の車だとの判断が難しいですよね?
そのため、多くの自治体で、障がい者用駐車場に停める際に、車内前方、バックミラーなどに外に見えるようにつるして掲げるカードが配布されていることもあります。
静岡県の場合は、主にはこのようなカードを車に掲げます。

画像引用:静岡県公式ホームページ
画像引用元 静岡県:🔗静岡県ゆずりあい駐車場制度のご案内
盲人のための国際シンボルマーク

画像引用元:社会福祉法人日本盲人福祉委員会
1984年に世界盲人連合が定めた、視覚障がい者のための世界共通マークです。安全やバリアフリーに配慮された建物や設備、信号機、点字郵便物などに使われています。
このマークを見かけた際は、視覚障がいのある方への配慮とご協力をお願いします。
掲載・使用を希望するとき:🔗社会福祉法人日本盲人福祉委員会へ使用申請書を提出。
管轄 画像引用元:社会福祉法人日本盲人福祉委員会
身体障がい者標識(身体障がい者マーク)

肢体に不自由のある方で、運転免許に条件が付いている方が運転する際に、車に表示するマークです。表示は努力義務とされています。
このマークを付けた車への幅寄せや割り込みは、やむを得ない場合を除き、法律で禁止されています。見かけた際は思いやりのある運転をお願いします。
購入できる場所:各警察署の交通安全協会や警察署の窓口、ホームセンターなどで販売
管轄:🔗警察庁交通局交通企画課
聴覚障がい者標識(聴覚障がい者マーク)

聴覚に障がいがあり、運転免許に条件が付いている方が運転する際に表示するマークです。表示は義務とされています。
このマークを付けた車への幅寄せや割り込みは、やむを得ない場合を除き、法律で禁止されています。見かけた際は、思いやりのある運転をお願いします。
購入できる場所:各警察署の交通安全協会や警察署の窓口、ホームセンターなどで販売
管轄:🔗警察庁交通局交通企画課
手話マーク

画像引用元:内閣府
耳が聞こえない方が、手話での対応を希望する際に使うマークです。役所や施設、交通機関、店舗など、手話対応が可能な窓口でも掲示されています。
このマークは、提示された場合は「手話での対応をお願いします」、掲示されている場合は「手話で対応できます」という意味です。
配布場所:申請不要で、無償で🔗全日本ろうあ協会のダウンロードページからダウンロード可能
管轄:🔗一般財団法人 全日本ろうあ連盟
耳マーク

画像引用元:内閣府
聞こえにくさがあることを伝え、周囲の配慮をお願いするためのマークです。聴覚障がいは外見では分かりにくいため、誤解や不安が生じることがあります。
このマークを見かけた際は、「聞こえにくい」ことをご理解いただき、コミュニケーションへの配慮をお願いします。
ヒアリングループマーク
「ヒアリングループマーク」は、補聴器や人工内耳のTコイルで使える施設や、使用できる機器に表示されるマークです。これがあると、補聴援助システムが利用できることがわかります。

画像引用元:内閣府
マークの入ったグッズ購入・データのダウンロード:🔗一般社団法人全日本難聴者・中途失聴者団体連合会
管轄:🔗一般社団法人全日本難聴者・中途失聴者団体連合会
筆談マーク

画像引用元:内閣府
耳が聞こえない方や、音声でのやり取りが難しい方、知的障がいのある方、外国の方などが筆談での対応を希望する際に使うマークです。役所や施設、店舗、交通機関の窓口などでも掲示できます。
提示された場合は「筆談で対応をお願いします」、掲示されている場合は「筆談で対応できます」という意味です。
配布場所:申請不要で、無償で🔗全日本ろうあ協会のダウンロードページからダウンロード可能
管轄:🔗一般財団法人 全日本ろうあ連盟
ハート・プラスマーク

画像引用元:内閣府
身体内部に障がいがある人(心臓、呼吸機能、じん臓、膀胱・直腸、小腸、肝臓、免疫機能)を示すマークです。身体内部の障害は、外見では分かりにくいため、誤解を受けることがあります。
優先席や障がい者用駐車スペースの利用など、配慮を必要とする場合がありますので、このマークを見かけた際はご理解とご協力をお願いします。
入手場所:自治体の福祉窓口で申請・受け取り出来る場合があるので問い合わせが必要。
管轄:🔗特定非営利活動法人 ハート・プラスの会
オストメイト/オストメイト用設備マーク

画像引用元:内閣府
オストメイトとは、病気などで人工肛門・人工膀胱を使用する、排泄機能に障がいのある方を指し、オストメイトの方や、オストメイト対応のトイレがあることを示しています。
見かけた際は、オストメイトの方への配慮と、トイレが配慮されていることへの理解をお願いします。
「白杖Sosシグナル」普及啓発シグナルマーク

画像引用元:内閣府
白杖を頭上に掲げてSOSのサインを示す視覚障がいのある方を見かけたら、声をかけてサポートする運動のマークです。
駅や路上などで危険がありそうな場合は、サインがなくても声をかけて支援をお願いします。
使用する場合:🔗岐阜市福祉部福祉事務所障害福祉課にて利用申請を提出。
管轄:岐阜市福祉部福祉事務所障害福祉課
ほじょ犬マーク

画像引用元:内閣府
ほじょ犬マークとは、身体障害者補助犬の啓発マークです。補助犬には盲導犬・介助犬・聴導犬があり、公共施設や民間施設でも同伴が認められています。
補助犬はペットではなく、きちんと訓練・管理されています。使用者が困っているときは、声をかけてサポートをお願いします。
使用する場合:厚生労働省の🔗「ほじょ犬マークとは」ページよりダウンロードして使用
管轄:🔗厚生労働省 社会・援護局傷害保険福祉部企画課自立支援振興室
【まとめ】知ること・理解すること・考えることがまず一歩
話題になった「逆ヘルプマーク」は残念ながら実用化されていませんが、「人を助けたい気持ちはどうすればいい?」という思いから考えた小学生の気持ちは、とても素敵だと思います。
今回紹介した障がい者用マークの中には、私自身も知らなかったものがありました。意味を知っていれば、私でも実際に役立てられることもあるかもしれないと改めて感じました。
「逆ヘルプマーク」が話題になったことで、普段私が持ち歩いている「ヘルプマーク」や、他の障がい者マークの意味を知ってもらうきっかけになったのではないでしょうか。
まずは知ること、そしてどう役立てるかを考えることが、思いやりにつながっていくような気がします。
<関連記事> 車いすユーザーが選ぶ使いやすい加湿器はこちら!
<参考記事・リンク>
・東京新聞:🔗私が手助け「逆ヘルプマーク」 静岡の小学生が発案
・京都新聞デジタル:🔗京都市北区の小学6年生が考えた「逆ヘルプマーク」が話題
・内閣府:🔗障害者に関係するマークの一例
・🔗東京都福祉保健局障害者施策推進部計画課社会参加推進担当
・🔗公益財団法人日本障害者リハビリテーション協会
・🔗静岡県ゆずりあい駐車場制度のご案内
・🔗社会福祉法人日本盲人福祉委員会
・🔗警察庁交通局交通企画課
・🔗一般財団法人 全日本ろうあ連盟
・🔗一般社団法人全日本難聴者・中途失聴者団体連合会
・🔗特定非営利活動法人 ハート・プラスの会
・🔗公益財団法人交通エコロジー・モビリティ財団
・🔗岐阜市福祉部福祉事務所障害福祉課
・🔗厚生労働省 社会・援護局傷害保険福祉部企画課自立支援振興室



